ぶらログ

真・清く正しくおぞましく

誰がディープインパクトを殺した

ディープインパクトに続いてキングカメハメハも死んだ。

 

多くの人間が現役時代、種牡馬時代の彼らを偲んでいる。そりゃ損失だわな。語りたくもなるわな。しかし、最初はそれに乗っかれなかった。

今更だが競馬なんて未勝利を勝てないどころかデビューすらできず抹消され処分される馬がゴロゴロいる世界。そういう馬のほうが遥かに「可哀想」である。それに比べればこの2頭はまだ幸せな馬生。

とはいえ、早逝してしまった原因は徹底的に追求していかねばならない。栄光を語って美談で終わらすな。今は悼む時期などと誤魔化すな。今の社台のやり方に落ち度はなかったのか。あるに決まっている。

では、ディープインパクトキングカメハメハを殺したのは社台か。

そんなわけない。生産界だけでなく、主催、馬主、そして客、全員が共犯ですわ。昔に比べれば馬の福祉が謳われつつある。その一方、競走馬や種牡馬に対する異常なまでの期待と負担はたいして変わっていない。それぞれの欲望が凝集し、ディープやキンカメを潰していなかったか。よく動物愛護側の人間が競馬批判してるでしょ。あれいつもその通りだなと思ってる。競馬好きはあの人らに反論できない。正論だから。競馬は馬を酷使したショーです。自分は基本的に感動だのロマンだのを競馬に期待していない。競馬には光と影がある。その影の部分に惹かれてる。でなければここまで好きにならなかっただろう。

馬優先主義とギャンブルはどこまで両立するのか長いこと考えている。この2つの間を行ったり来たりしている。とりあえずクソ暑い夏くらいパドックどうにかしろ。客もそれを受け入れろ。これだけ時代が変わってきている中で果たして競馬は今のシステムでいられるのか。いずれ時代に沿わなくなり忌み嫌われ、存続すら危うくなる時代がやってくる。そしたらそしたでしょうがないわな。残酷だから。競馬好きにも関わらずそれを期待している自分がいる。

 

最近までアニメ版ジョジョの奇妙な冒険5部が放送されていた。ジョジョの中で一番好きなのが5部だったから毎週楽しかった。5部のテーマは「運命」。ブチャラティたちは運命に負けた。あの石がブチャラティたちの形になった瞬間に彼らの運命は決まっていた。それでもプロセスで勝負したわけじゃん。無駄だったかもしれないが、それでも運命に噛み付いた。競馬も同じ。はっきりいって生まれた瞬間にその馬の運命なんてほぼ決まってる。10年後生きてる可能性なんてどのくらいですかね。大多数は死んでる。それでもあいつらは走らざるを得ない。無理やり種付けされこの世に生を享け育成され嫌でも走らされ用済みになったら処分。生存のための抵抗なんですよ競馬なんて。なぁーーーーにが優駿だよ。なぁーーーーにが感動をありがとうだよ。

 

博愛を叫ぶつもりはない。自分はこれまで数多の犠牲のうえに成り立っている競馬を散々消費してきた。これからもそうやって少しの罪悪感を背負いながら無責任に下品に冷酷に競馬を見る。そういえばあんな馬いたなーなんてとっくに処分されたであろう馬たちを思い出しながら。人間界も競馬界もクソ。クソの住人がクソの住人(馬)に仮託しているだけ。ディープインパクトキングカメハメハ、競走馬名さえつかなかった馬たちを殺してこれからも殺し続けるのは俺。

 

 

ディープインパクトの思い出?

皐月賞まで疑ってた。05年有馬はユタカちゃんのミス。06年春天は人馬ともすごいとしか言いようがない。凱旋門賞は本当にもったいなかった。どのみち失格という“運命”だったのだろうけど。最強馬論争は不毛だがあえて自分の最強馬の定義を述べるのであれば、「トップレベルでほぼパーフェクトの成績を残し大きな怪我もなく無事に走り終えた馬」。ナリタブライアンオルフェーヴルは最強ではない。ディープインパクトこそ最強馬の称号にふさわしい。特に好きではなかったけどな。

 

 

馬喰

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